表彰台を狙えるか!?全日本最速店長選手権2019本番レポート

2019.10.12

元プロから欧州レース経験者まで?強豪ひしめく全日本最速店長選手権

今年も来ました。自転車雑誌「サイクルスポーツ」が主催する人気企画、「全日本最速店長選手権」。
第9回目となるこの企画は、全国の強くて速い自転車店の店長たちが集い、日本の最速店長を決める一大イベントです。

全日本店長選手権に出場するメンツはそうそうたる顔ぶれ。

世界戦で活躍した元プロレーサーをはじめ現役プロツアー選手、実業団のE1(実業団シリーズの頂点のカテゴリー)で活躍する強者がひしめきます。

昨年初めてあさひから2名の選手が参戦し、並み居る強豪たちを前に予想を上回る走りを見せてくれました。

あさひの実力はいかに?!全日本最速店長選手権2018本番レポート

そして、今年6月に社内で行われた「最速スタッフ選手権」で上位を収めた2人の店長が今回のレース出場の切符を手にしました。

白熱!あさひ最速スタッフ選手権2019本番レポート

レースのテクニカルな説明はサイクルスポーツ12月号にお任せするとして、このブログでは自転車に興味のない人でも今回の選手権の臨場感を楽しめる様にお伝えしたいと思います。

今年出場する選手たちはこちら。

全日本最速店長選手権2019 選手リスト

 

レース直前インタビュー あさひから出陣する2人の選手に話を聞いてみた!

栄えある選手権への切符を手にしたのはeコマース店の中村選手と新鎌ヶ谷店の中村選手。
あれ、、、?まさかのダブル中村です。さすが全国名字ランキング第8位の中村さん。
社内の選手権では3位と5位という結果でしたが、ほか上位選手がスタッフのため、店長である2人が選抜されました。

どちらも中村で紛らわしいのでフルネームで2人の選手をご紹介します。

 

~ゼッケン23番 中村友一朗選手~

全日本最速店長選手権 中村友一朗 


Q. 今回のレース、どういう気持ちで挑みますか?
A. 「全日本最速店長選手権」は第1回目から誌面で読んでいた大好きな企画だったので、9回目でまさか自分が会社から機会を頂いて参加できると思いませんでした。
レースは趣味の範囲で走ってましたが、ここ数年はほとんど参加していませんでした。参戦する選手が全日本で活躍していた名だたる店長ばかりなので、ただただ緊張します。

Q. どんな練習をしてきましたか?
A. 出場することを決めてからは、レースを意識した練習を心がけました。室内でロードレースをバーチャル体験できるZwiftを購入し、1日30分から1時間程度自宅でトレーニングをしていました。
ほぼローラー台練習がメインでしたが、代表に決まってからは休日3時間ほどはトレーニングに費やして乗る機会を増やしました。
本来は目的地を決めて100km程度のロングライドをすることが好きですが、今回のレースで結果を残したかったので強度を意識したパワートレーニングをベースにしてきました。

Q. 注目する選手は誰?レースではどんな走りをしたいですか? 
A. 元々ロードレースで活躍していた、福原選手(ゼッケン27番)、涌元選手(ゼッケン40番)、藤野選手(ゼッケン30番)は間違いなく強いと思います。
今年の千葉のロードレースで活躍していたゼッケン25番 西谷選手も逃げ切って優勝していたので、調子がよさそうです。

目指す順位は一桁と言いたいですが、未知数なのでとにかく自分の出せる力を出し切りたいです。
レースの展開はのぼりがあるコースの方が成績がいいので、今回のコースは平坦であまり得意な方ではありません。
実力者ぞろいなので、どちらかと言うと追う側になるかと思います。しっかり我慢強くしのいで、一つでも上の順位で完走したいです。


「第1回目から誌面で見ていた選手権にまさか自分が参加できるとは、、、!」と話す中村友一朗選手。
社内のレースでは第5位という結果でしたが、果たしてどこまで爪痕を残せるでしょうか。中村友一朗選手の走りに期待です!

~ゼッケン22番 中村将也選手~

全日本最速店長選手権 中村将也


Q. 今回のレース、どういう気持ちで挑みますか?
A. 昨年のレースでは4位という成績を残したので、それ以上の成績を求められているのがプレッシャーです。
社内レースでも能登君、川勝君に抜かれているので、優勝した彼らではなかったからいい成績が残せなかったとは言わせたくないです。
本来このレースに出場できる実力を持つ若手の選手たちが今後あさひの代表として出場できるように良い走りをしてつなげたいです。

Q. どんな練習をしてきましたか?
A. 今年はカテゴリーがE1になったので、レースについていけるように強度高めに走ってきました。
やっていることは昨年から変わらず、全力で通勤し、全力でグルメライドをしていました。

あとは、今年はZwiftを始めたので、天候、時間に左右されずトレーニングできるようになりました。
Zwift自体はがっつりとしたトレーニングにはなりませんが、ゲーム感覚で楽しめるのが気に入っています。

Q. 注目する選手は誰?レースではどんな走りをしたいですか?
A. 去年負けた岩島選手(ゼッケン1番)、安藤選手(ゼッケン2番)、涌本選手(ゼッケン40番)は絶対的に強いと思う。
相手が格上なので自分の小細工の作戦が通用するとは思わないが、去年のような大逃げをされないよう見張っていきたいです。
昨年出場していた五郎さん(筧五郎選手)がレース展開を作っていたので、そういった人がいなくなるとどうなるのかが気になります。
あと、このレースが終わったらホノルルセンチュリーライドに参加するために翌日からハワイに出発するので、絶対にケガをしないことが目標です。


昨年初出場で4位という成績を残し、わずかに表彰台には届きませんでしたが、上位争いができたという事実があさひ全社員に大きな自信を与えてくれました。
今年は悲願の表彰台に届くのか。中村将也選手に注目です。

レース直前インタビュー 昨年表彰台に登った3人に話を聞いてみた!

昨年圧巻の走りを見せた3人の上位選手にお話を聞いてみました。

~2018年第3位 涌本正樹選手(ゼッケン40番)~

全日本最速店長選手権2019 涌本正樹選手

涌本選手は2015年の選手権で優勝、ここ数年常に上位争いをしている実力者。昨年も接戦の末あさひの中村将也選手を追い抜き、見事第3位を獲得しました。


Q. 注目する選手は誰?レースではどんな走りをしたいですか?
A. やっぱり昨年上位の安藤選手(ゼッケン2番)と岩島選手(ゼッケン1番)はすごいと思います。二人は別格です。
例年と変わらず、最後まで温存していきたいです。最近は走る頻度も減ってきていて、あまり調子が良くないです。


涌本選手のショップは毎年横断幕を用意し、遠方からもお客様が応援に駆け付けており、この選手権にかなり力を入れている事がうかがえました。
おととし王者の筧選手が以前のインタビューで「ショップによってレースへの思い入れが全く違う」とおっしゃっていましたが、涌本選手はまさにこのレースで上位になることにこだわっていることがひしひしと感じられました。

~2018年第2位 安藤光平選手(ゼッケン2番)~

全日本最速店長選手権2019 安藤光平選手

安藤選手はシクロクロスのカテゴリー1(一番上のカテゴリー)で活躍する現役選手。昨年はほぼ単独でメイン集団から約20秒の差を付け、30周目、40周目のポイントを1位で獲得し、ポイント賞と表彰台をダブルで獲得した圧倒的パワーを持った選手です。


Q. 注目する選手は誰?レースではどんな走りをしたいですか?
注目する選手は石倉選手。
大学自体にトラックでナショナルチームとして一緒に走った経験があり、スプリント力はすごいことは知っているので、最後まで一緒にいたくない相手です。
今年は店の移転などであまり練習できておらず正直自信がないです。レースはやれることをやるだけ。頑張ります。


レース前でしたが、非常にフレンドリーに応えていただき、元チームメイトの成毛選手と共に和気あいあいとされていたのが非常に印象的でした。

~2018年第1位 岩島啓太選手(ゼッケン1番)~

全日本最速店長選手権2019 岩島啓太選手

昨年安藤選手との壮絶なスプリント勝負の結果、見事優勝を勝ち取った岩島選手。今年は前人未到の3回目の優勝を目指して走ります。


Q. 注目する選手は誰?レースではどんな走りをしたいですか?
注目するのは安定している涌本選手(ゼッケン40番)、安藤選手(ゼッケン2番)もやはり強い。新しい選手だと普久原選手はジャパンカップで負けているので、気になる。
去年に比べて調子は良くないです。昨年は調子がいいことが実感できていましたが、今年は秩父宮杯で途中リタイアしてしまったりしてあまりいい波が来ていないです。
とはいえ、毎年3位、1位、4位、1位と上位入賞が続いているので3位以内には入りたいです。流れに任せて動いていきたいです。


数々のレースで戦歴を重ねてきた岩島選手ですが、このところ不調の波が来ているようで、直近の秩父杯ではディフェンディングチャンピオンとして挑戦しましたが、途中でリタイヤという残念な結果だったようです。不調の波を乗り越え、誰も成し遂げれなかった3回目の優勝をつかむことができるのか、注目です。

それにしても、ほとんどの選手がそろって調子が良くないと言っているのが印象的でしたが、ロードバイクの選手はレースが始まってから豹変することが多々あるので、実際の走りはどうなのか見どころです。

ちなみに、プロのレースになってくるとさまざまな駆け引きが繰り広げられ、レース中などに調子が悪いフリをして周りを油断させ、最後に本気を出すことも多々あります。この行動は、ロードレース用語で「三味線を弾く」といいます。三味線は歌い手に調子を合わせることからそのような表現が生まれたようです。面白いですよね。そんなの卑怯だ!と思うかもしれませんが、ロードバイクは心理戦で勝敗が大きく左右されるスポーツ。選手のやり取りも垣間見れるといろんな角度からレースを楽しめますね!

始めに知っておこう!レースの基本ルール

最速店長選手権の会場である下総フレンドリーパーク(千葉県)は、そこまでアップダウンが無く、比較的平坦な道が続く周回コース。」

全日本最速店長選手権2019 コースマップ
1.5kmの周回路を反時計回りに50周する75kmのレースです。
単純に最後にゴールした順位とは別に、ポイント周回による獲得ポイントが付与されます。

10周目、20周目、30周目、40周目(50周目はなし)の、フィニッシュラインを通過した順番に1位通過5ポイント、2位通過3ポイント、3位通過1ポイントが付与されます。

40周目には1位通過10ポイント、2位通過6ポイント、3位通過2ポイントとポイント数が増えるので、ポイントを狙う選手たちが熾烈なポジションどりを行い、目が離せません。

今年はレース実況とは別に解説の方が登場しました。昨年選手として出場経験もある解説者のお話は、初心者の方でもわかりやすくレース状況を説明してくれます。

全日本最速店長選手権2019 実況解説

いよいよはじまる。緊張のスタート

いよいよスタート。前回王者の岩島選手を先頭に各選手がスタート位置につきます。

全日本最速店長選手権2019 スタートライン

緊張が高まる中ローリングスタート(先導に続いて追い越し禁止の走行)。
リアルスタートでは例年以上の勢いで1周2分を切って周回が進みます。4周目で先頭に出たのが坂手選手(ゼッケン12番)。坂手選手は今年出場者の中でも最高齢54歳の大ベテラン。

全日本最速店長選手権2019 坂手選手

昨年還暦ながらレースを盛り上げてくれた生きるレジェンド三浦選手を彷彿とさせました。最速店長選手権は年齢の区切りがないので、ひとまわり以上の年齢差がある店長達が同じフィールドに立って戦っているとことを見れるのも、面白いポイントです。

アクセルがかかる。最初のポイント賞

あさひの中村将也選手、中村友一朗選手は後方につきます。
周を重ねるにもかかわらず、周回のスピードはまったく落ちず、2分5秒~10秒代をキープしたまま10周目のポイント賞の鐘が鳴りました。
石倉選手(ゼッケン5番)、中尾選手(ゼッケン21番)に続き中村将也選手が3位で通過しポイントをゲットしました。この調子だ、中村将也!

全日本最速店長選手権2019 中村将也選手

中村友一朗選手も必死に前を追います。

この日は9月とは思えない、異常なほどに熱い一日となり、選手たちも熱い日差しの下で体力がどんどん奪われていきます。

 

このレース最大の動きが。20周目のポイント賞

20周目のポイント周回を目前にして、涌本選手(ゼッケン40番)、西谷選手(ゼッケン25番)、岩島選手(ゼッケン1番)が前に出て、3人が逃げに成功します。
ポイント周回の直後にいったんペースが緩むと思いきや、まったくペースが落ちることなく見る見るうちにメイン集団との差が開いていきます。

全日本最速店長選手権2019

その後の3人のローテーションははたから見ていても非常に美しいフォームで息の合った走りを見せてくれました。

後から追うメイン集団も必死に追いかけます。

全日本最速店長選手権2019

しかし、集団の息が合わず、ペースが乱れたままなかなかスピードが上がりません。
ペースを上げて前を追いたい選手、あまりペースを上げたくない選手が先頭で入りまじり、上がったり下がったりする集団のペースに疲労だけが積み重なります。

全日本最速店長選手権2019

それでも必死に追いかけましたが、38周目で中村友一朗選手が無念のリタイア。残念ですが、このハイペースな展開の中頑張りました!

全日本最速店長選手権2019 中村友一朗選手

その後周回を重ねるごとにどんどん有力選手がリタイアしていき、ついには半分以下の20名弱の選手がコース上に残ります。

残った中村将也選手、何とか集団に食らいつき飛び出すタイミングを見測りますが、先頭の3名はきれいなローテーションを崩さず、まったくスピードが落ちません。

全日本最速店長選手権2019

ゴールラインを切るのは誰になるのか。

40周目を超えたあたりで、すでに先頭集団とメイン集団の間に50秒ほどの差ができてしまいました。
ここまで来ると、メイン集団は4位争いに切り替えたように少しペースが落ち着きます。

最終周回に入り、ゴールテープを切ったのは、涌本選手、岩島選手、西谷選手でした。序盤から見事な逃げと美しいローテーションを見せた3人。力の違いを見せつけるかのようなあっぱれな走りっぷりでした!おめでとうございます!

全日本最速店長選手権2019 ゴールシーン

さて、レースはまだ終わっていません。
4位争いを狙ってタイミングを見計らっていた中村将也選手は、最終コーナーの手前で牽制しながら山崎選手、遠藤選手と併走します。

全日本最速店長選手権2019 ゴールシーン

通常であればもう少し早めにスパートをかけたい中村将也選手ですが、タイミングを見計らっている段階で不意を突いた山崎選手に先を越されてしまいます。

先にゴールテープを切ったのは山崎選手、遠藤選手、そして後ろから勢いよくスパートをかけた石倉選手。中村将也選手は惜しくも7位でゴールインしました!最後の最後で非常に悔しい展開になりましたが、これ以上ないくらい全力をだしました。お疲れ様です!

全日本最速店長選手権2019 ゴールシーン

振り返ってみると今年は予想できない猛暑のなか、過去最高にハイレベルなレース展開でした。今年の優勝者のタイムは歴代最速タイムをたたき出し、集団のタイムも昨年優勝タイムよりも速いタイムでゴールをしました。半分近い選手たちがリタイアとなり、完走者わずか15名という数字が今年の選手権の厳しさを物語ります。

帰ってきた選手がチームメイトにねぎらわれます。本当にお疲れ様です。

全日本最速店長選手権2019 ゴールあと

少しずつ社内からも応援に駆けつけてくれる人数が増えてきました。選手たちも、格上の選手との厳しい戦いの中、みんなの声援が後押しをしてくれたと思います。

全日本最速店長選手権2019 応援隊

あさひの選手は残念ながら表彰台に届きませんでしたが、今年も全国の自転車店の方と熱いレースを体感できたことに感謝します。

この機会をいただきましたサイクルスポーツ様、スポンサーの皆様、レース前にお話を聞かせていただきました選手の皆様、本当にありがとうございました!

毎回店長選手権を見ていて思いますが、自転車は実際に走るのも面白いですが、見るのも面白いスポーツです。選手の駆け引き、ライバル同士なのに協力体制で進む選手たち。知れば知るほど奥が深いですね。自転車競技はまだまだ日本ではマイナースポーツ。自転車を扱うあさひとして、今後もいろいろな形で自転車の楽しみをお伝えしていきたいと思います!

TEXT:harry
PHOTO:toby & hirassy

全日本最速店長選手権2019 集合写真