MiNERVA-asahiの布田選手が自転車で8,848m登るエベレスティングにチャレンジ!

2021.11.12

エベレスティングに挑戦しました

エベレスティングと聞いても、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、巷で”坂バカ”などと呼ばれるヒルクライム大好きライダーやランナーの間ではひとつの目標とされているチャレンジイベントです。

MiNERVA-asahiのメンバーで先日E1クラスタに昇格した布田選手【名取店勤務】が、先日「エベレスティング」にチャレンジしました。

布田選手からチャレンジに関するレポートが届きましたので、是非ご覧ください。

あさひ公式レーシングチーム「MiNERVA-asahi」についてはコチラ

そもそもエベレスティングって何?

ヒマラヤ山脈にある世界最高峰の山。エベレスト山。

エベレスティングとは、獲得標高がそのエベレストの標高と同じ8,848mに到達するまで、自転車でひたすら坂を登るというチャレンジです。

エベレスティングの起源は、1994年に有名な冒険家で登山家だった祖父をもつイギリス人登山家のジョージ・マロリーさんがオーストラリアのドナ・ブアン山でエベレスト山の標高と同じ8,848mの累積標高を自転車で記録しました。

これを2014年にメルボルンを拠点にしていたサイクリストグループのHELLS 500が、このマロリーさんの記録に対して公式チャレンジとして設定しました。また、同じようにチャレンジしたいというライダーたちの交流を促してヒルクライムの公式ルールを制定し、エベレスティングに成功した人達をHELLS 500クラブの殿堂入りという栄誉として表彰することを目的に、公式ウェブサイトeveresting.ccを立ち上げました。

日本国内でも、コロナ禍でイベントやレースの中止が相次いだ事により、昨年あたりから挑戦する人が増えました。

エベレスティングのルールとは?

エベレスティングにはいくつかのルールがあります。

①累積獲得標高8,848m(29,029フィート)を記録する
②ひとつの山(丘)の同じルートを使用する
③下りも登りと同じルートを使用する
④途中で睡眠を取ってはならない — 1スティントで完遂すること
⑤食事・水分補給・充電の休憩時間は総合タイムに含まれる
⑥登りは毎回必ず頂上へ到達すること
⑦安全に下り、無事に自宅へ戻ること
⑧タイムリミットはなし

これらの条件を全て満たして、初めて成功となります。

STRAVA(走ったサイクルルートの記録ができるアプリ)を使用して申請を行うので、アプリの利用が必須になります。

エベレスティングに向けて準備するもの

私がエベレスティングのチャレンジを決めたのは約1週間前でした。理由は、地元の練習仲間がエベレスティングを達成していた事や、MiNERVA-asahiのチームメイトがレースで活躍する姿を見て「自分も何か頑張りたい、自分の限界にチャレンジしたい」と思ったからです。

ヒルクライム自体は苦手ではありませんが、ロングライドや耐久レースなどの経験はほぼ無いため、未知の領域という意味でもチャレンジでした。

まず最初の準備はルート選びです。獲得標高が8,848mに到達すれば良いので、走行距離に指定はありません。公道を使用し、同じコースを延々と走るので、(当然ですが)周囲への配慮や交通マナーの遵守も重要になります。

これを踏まえて、以下の条件を満たすルートを探しました。

▶ 平均斜度が7~9%(総走行距離230km前後)
▶ 簡単に、安全に下れるルート
▶ 近くに休憩のできる駐車場、トイレがある
▶ 自宅からあまり遠くない場所
▶ 車の交通量が少ない
▶ 信号、交差点がない
▶ ルート沿いに民家がない

この条件を満たすルートが自宅から車で約10分の場所にあったので、そこで新たにストラバでルートを作成、登録しチャレンジしました。

・距離:1.8km
・平均斜度:7.6%
・獲得標高:137m
・総走行距離:234km

のルートです。

1回の獲得標高が137mなので

8848÷137=64.5

65往復すればチャレンジ成功になります。

平均斜度がもっとキツいコースを選べば、その分総走行距離は少なくなります。その逆に平均斜度が緩いコースを選べば総走行距離は長くなってしまうので、自分の体力や登坂力に合わせてコースは選びましょう。

あとはスマートフォンに繋ぐことができて走行時のログを取り込むことができるサイクルコンピューター(CATEYEやWAHOO、GARMIN、BRYTONなど各社から発売されています)と、STRAVAアプリのダウンロードとアカウント作成が必要になります。

各社サイクルコンピューターをお探しの方はこちらから

補給食も忘れずに準備しよう

200km以上のライドは経験がなかったため、ネットでロングライドや長距離レースの際の補給食について調べたり、知り合いから教えてもらって準備しました。前半用に、菓子パンやおにぎりなどカロリーを摂取できる固形物。中盤用に、カステラやエナジーバーなど食べやすい固形物。後半用に、ゼリーや味噌汁などの非固形物。

エネルギー切れが最大の不安要素だったため、多すぎるかな?というくらいの量を念のため準備しておきました。最後に、ルートの試走や当日の天気を調べて当日を迎えます。

<<今回のエベレスティングに向けて準備した補給食>>
おにぎり×3
菓子パン×2
エナジーバー×1
カステラ×5切れ
バナナ×4本
エナジーゼリー×3
カップ味噌汁×1
コーラ500ml×1
レッドブル250ml×1
ポカリ1.5ℓ
その他(チョコ、アミノバイタル、コーヒー、白湯を適宜)

おそらくエネルギーとしては足りてなかったです。

当日の天気は最低気温5℃、最高気温20℃の予報だったため、汗冷えを考慮し、着替えを3着ほど準備しました。

試走では1往復10分前後で余裕を持って走れたため、後半のペースダウンと休憩時間も考えて13時間程度の走行時間を予定しました。

準備が整ったらエベレスティングにチャレンジ

チャレンジ当日。

3時に起床し、車で現地へ向かいます。

朝はかなり寒かったため、厚手の上着や手袋をつけます。4時にスタート。

スタートから2時間程度は、ほぼ真っ暗の中を走ります。使用したライトは「キャットアイ VOLT800」。かなり明るいライトですが、下りは慎重に下ります。この時点では当然まだまだ余裕ですが、補給食は食べられるうちに走りながら食べておきます。

ゆっくり走ったとしても、間違いなく後半キツくなる事は分かっていたので「きつくはないペース」を維持して走ります。1往復9分40秒程のペースを刻み、午前7時に18往復終わったところで1回目の休憩をとります。ここで、おにぎりや菓子パンを食べたり、トイレに行ったり、日昇して気温も上がり始めたので着替えも行います。10分ほど休憩して再度スタート。

25本を経過したあたりから、ペースに乱れが出始めます。同じペースで登っているつもりが、タイムが30秒程落ちてきました。脚も攣りそうになってきたので30本目で小休憩。止まって補給食と飲み物を摂り、すぐ再スタート。しかし、ペースがあまり戻らない為、35本目で再度休憩。座って10分程休憩を取ります。

再び走り始めますが、ペースは戻るどころか、どんどん落ちていきます。この辺りは本当に地獄でした。一本一本が異常に長く感じます。

体調の悪さや身体の異常な痛みは出なかったので、ひたすら耐えて走ります。しかし、ペースは11分を超え始め、力が入らなくなってきたので41本目で長めに15分ほどの休憩を取ります。

味噌汁やバナナ、カステラなど、吸収の早い補給を摂って、着替えも行い再スタートを切ります。この休憩の時に練習仲間が応援に来てくれたので、精神的にかなり救われました。

ここからは、ひたすら無心で走ります。

「あと何本、あと何本」

と、まるで念仏のように心で唱えながらペダルを回します。変な意味で集中出来ていたおかげかペースは10分30秒程に戻り、少しホッとしました。

残り10本で最後の休憩を取ります。心身共に最も辛かった瞬間です。本当にやめたくて泣きそうでした。(涙は枯れて出ませんでしたが)

内臓もダメージを受けて固形物は全く食べられません。しかしゴールは見えているので、10分程休憩して自転車に跨ります。もはやペースを上げるなんて不可能ですが、カウントダウンしながらなんとか走り続けます。特に最後の3本は気力のみでした。あまり覚えてません。

走行時間、12時間11分で65本完遂。

車に乗って、安全運転で家まで帰りました。

チャレンジが終了し帰宅してから

シャワーを浴びて、温かい飲み物を飲んで横になりました。30分ほど仮眠を取りましたが、身体中が痛くて起きました。

口に出来るものを食べながら、走ったデータを申請します。

データを申請するには公式ウェブサイトのeveresting.ccにアクセスし、メニュー内の「SUBMIT」から走行時のSTRAVAのデータを連携すれば可能です。サイト内は英語ですが、英語が苦手な方は翻訳機能などを使用すれば、それほど難しいものではないと思います。

翌朝、無事認定された事を確認して、正式にエベレスティング達成となりました!日本国内では316回目の達成です。(複数回やってる人もいるので、何人目というのはわかりません)

準備しておけば良かったもの

トップチューブバッグやハンドルバッグがあったほうが便利だと思いました。モバイルバッテリーからコードを伸ばしてサイクルコンピューターを充電しながら走ることが出来る為です。

補給食等の荷物もジャージのポケットに入れるのには量が限られる(自分の場合は腰痛の原因にもなります)ので、今後ロングライドの際は検討しようと思います。

サドルバッグは、ダンシング時の感覚が変わる、自転車から完全に降りないと物の出し入れができない、泥跳ねで汚れる等の理由で、個人的にあまり好きではないです。

あなたもエベレスティングにチャレンジしてみませんか?

エベレスティングには、ハーフエベレスティング(4,424m)や、バーチャルエベレスティング(Zwiftでのチャレンジ)など様々な種類があるので、興味がある方は是非調べてみてください。世界ではイカれた人達が凄い記録にチャレンジしています。

※エベレスティングは獲得標高に挑戦するものであって、タイムを競うものではありません。

近隣の方や同じ道路を利用する方々に迷惑をかけないように心がけることが最も重要です。

安全運転!