自転車のフレームジオメトリって大事!後悔のないロードバイク選び。

2016.10.08

ここまで違う?ロードバイクの乗り味

四万十ライドを1週間前に控えた週末、最終調整にと、久々の琵琶湖1周を計画しました。

今回乗った自転車は
2016 GENNIX R1 ELITE

10年前の650CのTTバイクから乗り換えたのですが、結論から言うと大興奮の鼻血ものでした。

私は身長158cm、体重47kgとやせ形で、たいした筋肉も、逆に脂肪もない、貧弱、貧脚人間です。
そんな人には、ロードバイクで採用されているテーパードヘッドやBB大口径の恩恵など皆無だと思っていました。


あれは力強いマッチョ人間こそが恩恵を受けられる規格だと勝手に思っておりました。

しかし、上り坂などでのBBの剛性感、下りでのヘッド周りの安心感など、その他のテクノロジーやジオメトリの違いもありますが、非常にしっかりした乗り味で驚きました。

150km走行し、まだまだ走りたい!と思うほど足を残して走りきることができました。

 

以前乗っていた650Cの自転車も、もちろん悪いものではなく、ハイモジュラスカーボンの、当時はフレームだけで30万はしたもの。
ただ、TT(タイムトライアル)、トライアスロン向けのため、長距離の乗車には少しきついものが。

ジオメトリってなんだ

 そこで、何故こんな乗り味が違うのか?と少し考えてみました。
ジオメトリですね。


ジオメトリは、カタログとかを見ると必ず出てくるもので、自転車の各部の寸法や角度などの数値を記載した図です。
これを見ることにより、ある程度は自転車のキャラクターが見えてきますが、寸法が変わるとどれだけ違うのかよくわからず、ついつい敬遠してしまいがちなのは確かです。
しかし、購入前にすべてのサイズがなく、試乗できてないケースも多々ある高額な自転車の場合、ここで自分の求めるニーズ(レースやロングライドなど)と合致していないと、もしかしたらロードバイクのおもしろさが半減してしまうかもしれません。

2台の自転車のジオメトリを比べてみた。

今回は、ジオメトリのことを用途の違う似たサイズのフレームと比較して、少しだけ記載させていただきます。
比較するのは
・今まで乗っていたTTフレーム(以下、TT) ※650cなので、サイズ上参考にならないデータもあります。
・2016 GENNIX E1 ELITE(以下、E1)
・2016 GENNIX R1 ELITE(以下、R1)

A シートチューブ長
自転車のサイズ表記では、この数字がそのままサイズとして記載されていることがほとんどです。

ここの長さをまずは一つの基準として、その他の数値を見ていきます。

スローピングフレーム
シートチューブとトップチューブの数値上の差があるほど、スローピングと言って、フレームがハンドルの方に向うにつれ上がる傾向にあります。
スローピングフレームだと、剛性が高くなり、サイズの自由度が高くなります。
また部材の量も減るため、軽量化にも貢献してくれます。

反面、ボトルケージ取付位置に制約があったり、振動吸収性が劣るというデメリットもあります。

ホリゾンタルフレーム
シートチューブとトップチューブに数値上の大きな違いがない場合はホリゾンタルと言って、トップチューブが水平に近いフレーム形状になっている傾向にあります。
ホリゾンタルはスローピングではデメリットになった、振動吸収性が高く、ボトルケージの取り付け位置の自由度もあがります。
また昔ながらのスタイルが、特に往年のサイクリストにとってはかっこよく見えます。
細身のスチールでホリゾンタルは、特に小柄な私には憧れです。

反面、サイズの自由度であったり、空力、剛性、重量という面では不利になります。

どちらが優れているということではなく、どちらの形状が好きかで選ぶといいかと思います。

・TT:480mm
・E1:450mm
・R1:460mm

B トップチューブ長
長いほど、サドルとハンドルとの距離が遠くなります。

実寸とホリゾンタル換算と数値が2つある場合がありますが、乗車サイズを確認するには実寸を参考にします。

・TT:473mm
・E1:506mm
・R1:515mm

C チェーンステー
長くなると、後述するホイールベースが変化するため、直進安定性と乗り心地に影響を与えます。

逆に短くなると、直進安定性は下がる分、ぺダリング時の反応が良くなり、キビキビした乗り味になります。

一般的に、ロードレースなどのレース向けほど短く、 街乗りやロングライド向けほど長くなる傾向にあります。

・TT:385mm
・E1:412mm
・R1:405mm

D ヘッドチューブ
ハンドルの高さに影響を与える所で、長くなると、上体を起こしたロングライドや街乗り向けの自転車になり、短くなるとロードレースなどのレース向けになる傾向にあります。

・TT:115mm
・E1:125mm
・R1:110mm

E シート角
シート角は、ロードレースなどのレース向けの自転車ほど立ち、ロングライドや街乗りなど、よりゆったり乗るような自転車程倒れている(寝ている)傾向があります。

トライアスロンやTT系の自転車は、短い距離をスピード出して乗るため、シート角を立ててよりスピードを出しやすい設計にしている場合が多いです。

・TT:80.1、78°(固定位置で選ぶことが可能)
・E1:74.5°
・R1:74.5°

G BBドロップ
少しわかりにくい所ですが、BBドロップは、前後ハブを結んだ線と、BB中心部からの垂直方向の距離になります。
安定性に影響を与える所です。

一般的に大きいほど低重心で、カーブや直進での安定性が増します。
逆に重心が高い(数値が低い)程、安定性は損なわれる分、より加速しやすく、キビキビした乗り味にすることが可能です。

TTフレームでは、どうしても坂道の安定性が悪かったのですが、こんな所も影響しているようです。

・TT:45mm
・E1:73mm
・R1:71.5mm

F ヘッド角(ヘッドアングル)
ヘッド角はハンドリングや振動吸収性に影響を与える角度です。

寝てる程ハンドリングが安定し、フォークがしなるため振動吸収性が高くなります。

立っている程安定感が損なわれる傾向がありますが、ハンドリングが軽くクイックとなり、サドルも前方に来るため、前傾姿勢をとりやすく、よりスピードを出しやすいポジションにできます。

一般的にはロードレースなどのレース向けは立ち、ロングライド向けは倒れて(寝て)きます。

・TT:72°
・E1:70.75°
・R1:71.75°

H フォークレイク(FR) フォークオフセット
ヘッド中心部分(フロントフォークコラム)からの延長線と、前輪のハブ軸との距離を表しています。

ここも乗り心地や安定性に影響を与える所です。

仮にヘッド角が倒れて(寝て)、フォークオフセットが大きくなると、直進安定性と振動吸収性が高くなります。
逆に、ヘッド角が立って、フォークオフセットが小さくなるとよりキビキビした乗り味にすることができます。
(ヘッド角度を固定させて、オフセットを変えるだけでは逆となる場合もあります。)
ロードバイクにはレース用、コンフォート用とジオメトリが様々で、ヘッド角を無視したフォークオフセットだけの数値量変化だけでは乗り味は決定できないので注意が必要です。

・TT:35mm
・E1:53mm
・R1:50mm

I トレイル
ヘッド中心部分(フロントフォークコラム)からの延長線を地面まで伸ばした点と、前輪ハブ軸を垂直に下した点との距離を表しています。

フォークレイク(FR) フォークオフセットと同様に、ここも乗り心地や安定性に影響を与える所です。

一般的にトレイルが大きいと、(ヘッド角が倒れて、オフセットが小さくなる)直進安定性は保ちやすい反面、軽快な運動性能が失われる傾向にありますが、ヘッド角とも密接な関係にあり、ヘッド角次第では必ずしも絶対ではありません。

長距離を走るランドナーでは、特に大きくとっており、重い荷物を取付しても直進安定性を高めています。(その分クイックな操作はできない)

逆に小さくなると(ヘッド角が立ち、オフセットが大きくなる)、直進性は損なわれる分(手を離しての走行は難しくなる)、反応が良いハンドリングになります。

ヘッド角、フォークレイク、トレイル(タイヤ外径)は密接な関係があり、仮にトレイル量が同じでも、それぞれのサイズ変化によって乗り味は異なります。

ヘッド角が立った自転車に、フォークレイク及びトレイルのついたフォークに付け替えてしまうと、違和感のある乗り味になる可能性もあります。
自転車のキャラクターに合ったバランスが大事です。

・TT:データなし(約50mm)
・E1:62mm
・R1:59.5mm

K ホイールベース
ホイールベースは、走りの安定性に影響を与える所です。

フォークレイクやチェーンステーの味づけにより変化しますが、長いほど乗り心地及び安定性が高くなります。
反面、短いほど加速性能が高くなり、キビキビした乗り味になります。

一般的にロングライド向けの自転車ほど長く、レース向けの自転車ほど短い傾向があります。

・TT:947mm
・E1:969mm
・R1:969mm

L スタック 
BBの中心部から、ヘッドチューブ上端までの長さを表しています。

数値が低いほどハンドルが低く設定できます。

ちなみに、最近はカタログに記載されていることが多いですが、10年位前は見たことがありません。

Jのスタンドオーバーハイトはサドル先端部分の実際のトップチューブ上端から地面までの距離を表します。
跨いだ際に、股が当たるのか当たらないのかを判断しますが、適正なサイズのフレームであれば、通常は股よりもフレーム上端は下にきます。
(ロードバイクの場合、そこまで重視せず、あれば参考程度に確認する程度です。)

・TT:データなし(約445mm)
・E1:520mm
・R1:507mm

M リーチ
水平換算トップチューブ長のうち、BB中心部を上に伸ばしていった際の、ヘッドチューブ中心までの距離を表しています。

スタックと同じく重要で、サイズ上のトップチューブ長だけでサイズを決めてしまうと、シート角によっては小さいサイズに見えた方が実はハンドルまでの距離が遠い、ということが発生します。(一見大きいサイズに見えても、ハンドルまでの距離が近い、又は同じフレームも存在します。)

例えばXXS、XSでトップチューブ長は10mm違いがあるのに、実際のリーチは同じとなっています。
リーチは同じなのに、XXSはスタックが低いので、ハンドルとサドルの高低差がより生まれ、遠く感じる可能性があります。

こういった際の選び方としては体の柔軟性や好み、使いたい用途で分けます。
ハンドルを低くセッティングしたいのであればXXSもありですが、初めてであまりハンドルを低くしたくない、柔軟性がない場合はXSという選択もありです。
同じ適正サイズでも、レースで使用したいのか、ロングライドで使用したいのかでも選ぶサイズは異なってくる可能性があるのです。

話は逸れましたが、それぞれのデータは
・TT:データなし(約380mm)
・E1:360mm
・R1:374mm

ロードレース向けの R1
ロングライド向けの E1

トップチューブ長は515と506で、差は9mmです。

さらにスタックとリーチを見ていきます。
R1のスタックは507mm、E1のスタックは520mmで差は13mmです。
R1のリーチは374mm、E1のリーチは360mmで差は14mmです。

やはりR1の方がハンドルは遠く、低くなるのでより前傾姿勢がとれるようになります。(TTはさらに。)
現在乗っている自転車のスタックとリーチを把握することにより、だいたいのサイズ感は同じにすることが可能です。
ジオメトリを見る上で、スタックとリーチは外せないポイントです。

ジオメトリは単体で見ても判断はできず、自分のやりたい事(レースなのかロングライドなのかなど)、現在乗っているフレームのサイズと比べてどうなのかを比較して決めていくことが重要です。

あとはフレームの素材や、メーカーごとのテクノロジーにより乗り味が変化していきます。

レース向けの自転車とはいえ、TTバイクと比べて全ての数値が変わっているため、同じカーボンフレーム(カーボンの種類やテクノロジーも違う)でも乗り味に違いが出て当然ですね。

皆さんも、自転車を選ぶ際はまずジオメトリを参考にしてみてはいかがでしょうか!